雨が降り、海水や川水に変化した水が蒸発し、雲となり、再び雨となるように、自然の環境下では、均衡状態を保つ循環が常に行われています。その営みは恣意性や欲望で動いているのではなく、ただ自然の摂理によって状態変化が起こっています。
わたしたち Daisy Balloon は、本作品において、自然環境下で行われている循環と均衡をテーマにしました。作品では、全体構造として「自然環境の営み」を、バルーンに光を当て反射により現れた光を「自然の叡智」として表しています。
展示会場では、来館者が歩くことで起こる気流によって個々のバルーンはゆっくりと回転し、より多くの光が拡散し交差します。これは、人類の様々な文化や背景によって世界の捉え方が異なるように、自然から学ぶべきことも多様に広がっていることを表していると同時に、それらが交わることで大きな「祈り」へと繋がっていくことを示唆しています。
わたしたちの惑星が誕生してから約46億年と言われていますが、生命は常に自然から学び進化し続けてきました。様々な均衡が崩れ始めた昨今、人類もまた自然から多くのことが学べる筈だとわたしたちは考えています。本作品を通じて、「自然の叡智」を考える契機となり、多くのコミュニケーションが生まれることを願っています。
Daisy Balloon
循環
広範なリサーチを重ねる中で、バルーンを巧みに操りコンテンポラリーな作品を生み出すアーティストとグラフィックデザイナーから成るユニットに辿り着き、2018年の訪日の際に、念願であった対面を果たした。それ以来、数えきれない程の意見交換や会話を経て、今回の『バランス（Balance）展』の開催に至った。
バルーンと言えば、お祝い事やお祭りを彷彿とさせるアイテムのひとつであるが、本質的には儚いものであり、少しずつしぼんでいくその姿は、終わりが近づいていることを表しているかのようである。
ジャパン・ハウス サンパウロのために制作されたインスタレーションに用いられたバルーンは、本質的な儚さを失うことなく、光に呼応する特性に加え、高い持続性と耐久性を兼ね備えている。彼らは素材へのこだわりだけでなく、多くのインスピレーションを注ぎ今回の制作に取り組んだ。
空間の活かし方、バルーンの形や大きさの多様性、広範囲に輝きを放つための最適な光の取り入れ方、自然発生する、あるいはギャラリーを巡る来観者の行き交いが起こす風によるかすかな動き…これら全ての要素が、「この世に生きる」という営みにおいて、壮大でありながらもいたってシンプルな疑問を投げかける。
この作品からは、時の流れがもたらす変化を、日を追うごとにかすかに感じることが出来る。それはまるで私たちが生きることと同じように。
それを隠したり、取り繕ったりせず、その定めを現実のものとして受け入れ、細貝里枝氏と河田孝志氏は、雲が垂れこみ雨粒が降り注ぐ様を暗示するような、浮遊する雨を表現している。あるいは雨粒の上昇なのだろうか？循環には多くのシンボリズムが秘められている。
本展は、自由なインスピレーションと黙想を促すための感覚を呼び覚ます。同時に彼らは、このインスタレーションを通してこの上なく理想的な『バランス』を探究し、自然界への敬意を払う集団的意識を掻き立てるのである。
ナターシャ・バルザギ・ジーネン
企画担当局長
#DaisyBalloonNaJhsp